「視神経乳頭陥凹 要精査」を人間ドックで指摘をされて受診される方が結構多いです。
最近の患者さんは事前にネット等で自分なりに下調べをして受診される方が多いのですが、
緑内障の患者さんは自覚症状で見えにくくなって自分から受診して見つかるよりも、人間ドックやたまたまの眼科受診で視神経乳頭の形状を見て発見される方が圧倒的に多いです。
40才を過ぎればおおよそ30~40人に1人は緑内障にかかっているという疫学調査もあります。ご自身が小学生の頃を思い出して下さい。1クラス30人~40人学級だったと思うのですが同じクラスメイトの中に1~2人程度は緑内障になる人がいるということです。
視神経乳頭陥凹の指摘を受けたとき、どういった眼科を受診すればいいかのおススメポイントは?
1. 視力検査ができる
2. 眼圧検査ができる
これもどこでもできますが、緑内障患者さんは圧平式眼圧検査(アプラネーション)ができる眼科医に診てもらうことが望ましいです。
3. 眼底写真が撮影できる
4. 静的視野検査が可能である
ここまでは大概の眼科で可能です。ここからがより詳しく緑内障の検査をするための検査ですが施設によって可能な診療所、できない診療所があります。
できればこういった検査ができる診療所の方が詳しく検査ができるのでは?と思っています。
5. 動的視野検査が可能である
6. OCTの検査機器がある
この患者さんの場合はたまたま眼科受診した際に眼底検査で視神経乳頭陥凹拡大が気になり眼底写真を撮らせてもらいました。
右目の上方に神経線維束欠損もあるため静的視野検査をするとやはり右目の下方に比較暗点があることが確認されました。さらに緑内障の疑いが強くなりました。
後日動的視野検査とOCT検査をすることで緑内障が確定したわけです。
網膜(視神経乳頭形状)の異常と視野検査の異常が一致することが何よりも診断に大切です。
左の写真は視神経乳頭を含む眼底写真です。専門家が見れば視神経乳頭陥凹の拡大と上方に神経線維束欠損があるのがわかります。白黒の写真で視神経を時計に例えた場合に10時~12時方向からの網膜がその他の部位に比べると黒く見えている部分です。視野異常を起こしている可能性があります。
さらに左の写真も合わせて見てください。同じ部位が赤色にぬりつぶされていますよね。OCTという検査機器は網膜の厚みを調べることが可能で赤色に示されている部分は自分と同じ年のアジア人と比較して網膜がうすくなっているところ直感的にわかるようになっています。左眼は視神経周りの網膜の厚みは平均的に保たれており神経線維束欠損がないことがわかります。
今までは眼底写真を読影する医師によって判断がまちまちなところもありましたがOCT検査をすることによってより正確な診断が可能となりました。
さらに左のOCT画像を見てもらうと左眼の視神経乳頭周りの網膜厚は正常範囲内であることより緑内障は否定的であることが示唆されます。
静的視野検査は初期の緑内障症状を見落とさないための検査です。正常人の視野(見える範囲)は鼻側に60°、耳側に90°程度あります。その視野の広がりの中で中心30°だけもしくは10°だけを調べることが可能です。非常に細かい検査ですが、これだけの検査であればその周辺部位の視野に異常があるかとうかまではわかりません。
そこで動的視野検査(ゴールドマン視野検査)を併用して検査することでより詳細に検査が可能になります。
もうひとつお伝えしたいことは、視野検査は大切な検査であり緑内障の進行の程度を把握するのに必須な検査ですが、最大の問題点は自覚的な検査であり検査の度に結果にばらつきがあり再現性が100%ないことです。何回か検査を重ねていき初めて結果に信頼性がうまれます。被験者(患者さん)によっても上手に検査ができる方もあれば何回か検査をしてもなかなか上手にできない患者さんもあります。
しかしOCT検査は客観的な検査ですのでしっかり固視灯をみつめておくだけで再現性のあるしっかりしたデータがとれます。
自覚的な検査と他覚的な検査をつきあわせることでより信頼性に高い検査結果が得られる訳です。
緑内障は早期発見・早期治療が大切と言われていますよね。当院ではさらに早期管理ということを患者さんに伝えています。
緑内障のリスクファクターのある方や疑いのある方、すべてが治療対象ではないと思います。しかし早い時期より緑内障治療に精通した眼科医の管理のもとで定期検査をして治療のタイミングを逃さないことは必要です。
・静的視野検査 |
・・・ 両眼で580点 | ・・・ 検査時間15分程度 |
・動的視野検査 | ・・・ 両眼で390点 | ・・・ 検査時間20分程度 |
・OCT(眼底三次元画像解析) | ・・・ 200点 | ・・・ 検査時間5分程度 |